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IMaI邸訪問記


さて今回はIMaIさん(Twitter ID:@coreaudio_imai)宅にお伺いさせていただきました。


今回は図々しくも、Imaiさんのシステムを測定までさせていただきましたので、その測定結果と聴感レビューを書きたいと思います。


Innocent Keyさん宅もそうですが、本当に色々と機材に触れさせていただけて感謝感謝です。



目次

1.機材構成

2.見えてきた問題

3.測定&改善

4.改善後のレビュー

5.余談





1.機材構成

Imaiさんのシステム構成は自作の2wayにスーパーツイーターとサブウーファーを足したもの中心に組まれており、それらを駆動する上流は非常に豪勢な構成となっております。


自作界隈とハイエンド界隈は、水と油の様に分離している印象を持つ私にとっては、非常に興味深いです。


詳しく書くとあまりにキリがないので、簡単にかけば

・トランスポート:吉田苑PC



・DAC:MSB Technology - Analog DAC



・プリアンプ:Jeff Rowland - Corus


・パワーアンプ(低域):Dan D'Agostino - S200

・パワーアンプ(高域):Conisis - CL2



・ウーファー:Mark Audio - Alpair12PW

・ツイーター:ESS - Great Heil Driver

・スーパーツイーター:Townshend Audio - Maximum Supertweeter



・サブウーファー:Velodyne - Optimum8







2.見えてきた問題

さて私のリファレンス局であるSergio mendes - Capivaraを聞いている時の事。

私はこの曲において特に重視しているのが「低域の階調表現」と「グルーブ感」なのですが、前者の階調表現では明らかに50Hz付近の抜けを感じました。


オーナーも「サブウーファーをもう少し階調の見えるサブウーファーが欲しい」との事で、M&Kあたりをお勧めする事もできるのですが、VelodyneのOptimum8もかなり優秀な部類です。


実はこのOptimum8は私がIMaIさんに貸し出しているサブウーファーなので、ある程度のキャラクターは知ってます。


そこでIMaIさんも自作派という事なので、おこがましくも測定をさせていただきました。






3.測定&再設定

3.1現状確認

現状を確認する上で、ちゃんとクロスできているのかを確認します。

サブウーファー(赤)とウーファー(緑)のニアフィールド測定がこちら↓

う〜ん、これでは上記の様なレビューになってしまうのも必然ですね.......。


そして驚いたのが、ウーファーのクロスオーバーが96dB/oct.(Electrical slope)と類を見ないほど急峻なカーブです。


ユニット間位相差を見てみました。

かなりサブウーファー(赤)の位相が回転しているのが分かります。

そしてここまで位相が回転し、位相差が生じてしまうと、f特もかなり荒れます。


AccuphaseのチャンネルデバイダーはFIRだとばかり思っていたのですが、IIRだったのですね。ちょっと意外でした。


そしてリスニングポジションの周波数特性

やはりかなり荒れています。




3.2素のキャラクターを把握する

さて状況が把握できたので、次はユニット単体(ネットワークスルー)での周波数/位相特性を見ていきます。

まずは周波数特性(緑:サブウーファー / 青 :ウーファー)

ゲインが違いますが、それぞれの特性を見るだけで、このゲインのままクロスさせるわけではありません。(言い訳)


位相差が0°になるポイントが42Hzにあるので、そこでクロスしたかったのですが、いかんせんウーファーの周波数特性がそこまで下が出ていません。


なので極力低くクロスする様にしました。

ウーファーはそのまま落とし、サブウーファーのハイパスでクロスを弄ります。




3.3改善後

周波数特性(黄土:サブウーファー / 緑:ウーファー)

凡そ65Hz、24dB.oct.のクロスオーバーが出来ました。


ユニット間位相差は前よりかは良くなりましたが、あまり良くはないですね。

65Hzポイントでは84°の差があります。

(やはりもう少し下の方で急峻にカットしたいです。)


ただ低域の指向性制御の話で、キャンセリングは120°以内であれば許容内とd&b audiotechnik社の説明もあったので、まあ許容範囲として今回はこの辺で(時間もないので)手を打ちます。


続いて総合特性です

改善前(黄土)

改善後(青)

相対的に位相差が小さくなった事によって、音圧は上昇しましたが、それでもまだ55Hzと130Hzのディップは消えません。



試しにサブウーファーの位相を反転してみました。

青:正相 / 紫:逆相

クロス付近(55Hz~100Hz)にかけて音圧が下がっています。

つまりこのディップはサブウーファー〜ウーファー間極性の話とは別問題の可能性があるという事です。




3.4 部屋の影響

ここでIMaIさん宅の部屋のモード群を見てみました。

長辺と短辺の一次モードの間が疎になっています。

ここがモードが57Hzのディップの原因になっている可能性が大きいです。



また程度IMaIさん宅のスピーカー/視聴位置をプロットすると、リスニングポジションでの周波数特性をシミュレーションできます(黒)


これに実測データをスケールを合わせてプロット(紫)するとこうなります↓


機位置を精密に入れているわけではない為、若干のズレはあるものの、実測データの概形とシミュレーションの周波数特性がそれなりに正の相関がありそうです。


あくまで予想ではありますが、相関の無い130Hzあたりのディップは床か天井によるコムフィルターが原因だと思います。


これを回避するには、コムフィルターが生じる帯域までサブウーファーに持たせる他ないです。


私が所有するMAGICO V3などは床とウーファーの距離差を無くし、床によるコムフィルター回避の典型的なユニット配置といえるでしょう↓

またシミュレーションの吸音率は0.1の為、エッジが立って(Q値)が高いですが、実際には低域は外に逃げちゃうので、より紫線にに近い形になると思います。


今回は時間の関係でできませんでしたが、セッティングでまだまだ追い込めます。


ただ一番の解決案はもう一台Optimum8を買う事だと思います。(余計なお世話)






4.改善後のレビュー

音はESS Heilがダイポールなせいか、かなり開放的で爽やかな音。

それでいて低域から高域にかけて躍動感があり、自然に足が動く様な音です。


またHeil独特の個性派見えるものの全体的にリッチなグルーヴ感はあり、聴いててかなり心地良いです。


何かこのアメリカンサウンド聴いたことがあると思ったら「Ocean Way Monitors」のスピーカーに非常に似ているのです。


2.の項で挙げたリファレンス曲、Sergio mendes - Capivaraは何を隠そう、Ocean Wayでマスタリングされ、Ocean Way Monitorsのプロモーションとして使用、そこで私が惚れた曲です。


話が逸れましたが、そういう事なので相性は非常に良く、正直Ocean Wayに憧れを抱いている身としては魅力しか感じない音作りです。



D 'AgostinoのアンプやMSBのDACなどは他所でも聴いた事があり、非常に濃厚かつ気分を上げるアメリカンサウンドは、ここが大きく音の方向性に寄与している気がします。



ともあれ一歩間違えれば破綻しそうなミクロで見ると支離滅裂な所がありつつも、マクロで見ると全てが計算の範疇である事が解り、IMaIさんのコーディネート力には脱帽せざるを得ません。



若輩者である私に、色々と貴重な経験をさせてくださり、ありがとうございました。

非常に有意義で楽しい1日でした。













5.余談

ここからはかなり辛辣な物言いになってしまうので、穏やかにオーディオを嗜みたい方はブラウザバックしてください。


サブウーファーについて関して、あまりにも日本のオーディオ界隈が杜撰だと思ったので書きます。


まず諸悪の根源、スタガー接続。

これは結構なメーカーが用いてる、所謂X.5wayと表記されるアレです。

ウーファーの最低域をもう一本同じウーファーで補完してあげようという考えです。


意図してる事はサブウーファーと一緒なので、ここで例として挙げてます。


しかしスタガー接続が成立する条件として

「同一ユニットかつFIRフィルターでネットワークを設計」

しない限りほぼほぼ意図した機能しません。


それどころかf特を乱します。


それは上記で書いた様に、f特しか見ずに位相回転を無視してるからで、スタガー接続が機能するのは「ユニット間位相差が0°の条件下になった時」だけです。



ではしっかりとサブウーファーを繋げるにはどうすれば良いのか?

1.測定器

2.ディレイ付きチャンネルディバイダー

が無いと不可能です。


某A社のチャンネルデバイダーは正直高くて不便です。

dbxやbehringer、ベストなのはLake LM26でしょう。


加えて自分の設定してるクロスオーバーは、電気的な周波数と遮断スロープであって、実際にはスピーカーそのものの機械的損失を無視しています。


なので測定しないと、そもそもクロスオーバーがシッカリ機能しているか分かりません。



私もサブウーファーを強く推奨する身として、世間のサブウーファーがちゃんとした運用をされないのにも関わらず、酷評されているので、今回のこの記事の余談として述べました。



今回はサブウーファーでしたが、機材を評価するときは前提条件を提示しないと、その評価を評価でないどころか、勝手な憶測だけが一人歩きしてしまう印象があって不愉快です。

(どこまで提示させるかも難しいですが)



これについては追い追い別の記事にします。









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