ここからは私のホームシアターの改善を明確に、そしてより具体性を持たせるために、私の機材にて問題点を見ていきます。
前回問題点挙げた問題点が下記の通り
1.各スピーカーのクロスオーバーの周波数 / フィルター特性が同一では無い
2.各スピーカー(ユニット)間の極性が反転している
3.各スピーカーのキャラクターが同一では無い
4.そもそもチャンネル間でユニット構成が違う
1から見ていきましょう。
まずクロスオーバーにて位相は回転します。(FIRでの構築した場合を除く)
そうすると違うクロスオーバー同士のスピーカーを同一に再生した場合には、各クロスオーバー周波数付近で周波数特性が乱れてしまいます。
2について
例えば2wayの場合はクロスオーバーのフィルター特性で、ウーファーとツイーター間で極性が逆になったり、ならなかったりします。
もし、この2機種を使用してしまった場合。言わずもがなクロスオーバー周波数が同一でもクロスオーバー周波数以前 or 以上でキャンセリングが生じます。
例えばCchのドライバーだけ極性が反転している場合、L→Rの定位移動は下記の写真のようになります。
画像はファントムセンターなので、イメージとしては不適合ですが(Cchが存在すると仮定してください)
・L~C
・C~R
ch間で音圧が弱くなってしまい、不自然な定位移動となります。
なので恐らくJBLなどはメインスピーカーとサラウンドのユニット構成もクロスオーバーも違うのですが、極性だけは揃えてあるのかと思います。
ちなみにMeyer Soundと言うメーカーが大手のポストプロダクションに多く採用されているのですが、上記の点を踏まえてFIRフィルターにてクロスオーバーを構成しているからだと思います。
3について
「もし同一な機能するクロスオーバーであれば、ユニットは何でもいいのか?」と言うお話し。
確かにスピーカー間における定位の消失はないと考えられます。しかし、今度はスピーカー単体のキャラクターによって繋がりが悪くなってしまう恐れがあります。ここで定義するキャラクターとは
・周波数特性
・高調波歪み
・指向特性
と、とりあえず定義しておきます。
言うまでもないですが「周波数特性」と「高調波歪」に関しては、一番感覚的に判るキャラクターかと思います。
まだ正確にはデータがある訳ではないですが、安価なスピーカーほど歪みが大き良い印象で、良く2chオーディオの延長線上でホームシアターを構成されている場合は、センタースピーカーだけクオリティが下がってるケースを散見します。
その場合定位移動の場合に、例えばL→C→Rで移動したとして、Cchだけ安価だと(若しくは高価だと)、そのCchだけ浮いてしまう恐れがあります。現に私の家の場合は浮きました(笑)
次に指向性ですが、基本的に家庭などで(任意の視聴ポイントがない場合)に関しては、
指向性が広い方が望ましく、また各chの指向性は同じにするのがベストとされています。
(注1)
THXの家庭用フォーマットでは、サラウンドスピーカーはダイポール or トライポール(2,3方向に音を放出)のケースが多いですが、これは上記の事が理由ではないかと思います。
(個人的にはマルチポールはコムフィルター現象を引き起こすので、個人的には好きではありませんが...)
(THX家庭フォーマットのサラウンドスピーカーの一例)
4.そもそもチャンネル間でユニット構成が違う
これは1,2,3の総おさらいです。
例えば3wayで構築されるスピーカーと、2wayで構築されるスピーカーでは、構成の違いによりクロスオーバー周波数が異なるケースが多いです。(JBLもMeyerも実際に異なります。)
自分自身で全chを揃えた場合には、各スピーカーユニットの極性が揃っている事は無い事は無いですが、偶然レベルの確率でしょう。
なのでユニット構成が異なる場合は極性のみ合わせて、クロスオーバーでの周波数の乱れには目を瞑るほかないと思います。
ここで究極の映画館(ポストプロダクション)を紹介します。
東映のポストプロダクションの一つ「DUB1」です。
ここは全ch
・ユニットを同一化(なんとサブウーファーまで!)
・FIRフィルター(Lake LM26)にてクロスオーバーを構築
を達成しています。
本当に素晴らしいポストプロダクションだと思います。
ただDUB1は限られた極少数の方しか聞けないので、身近な映画館のフォーマットで行くと......
なんと「IMAX」がこの課題を達成しています。
IMAXのスピーカーは基本的にメインとサラウンドは全て同じ物を使用しており、クロスオーバーやスピーカー構成の件は全て解決しております。
(これは成田IMAXのサラウンドスピーカーです、メインと同一の構成です。)
また後のコラムで部屋について書きますが、IMAXの箱の設計は全吸音(Non-Environment)思想に近く、余計な反射を抑え、虚音源の発生を抑制しています。
(壁面もしくは天井は全て吸音となってます)
話を纏めますが、高級なスピーカーシステムでホームシアターを構成するのは、視覚的満足感や量感と言った側面しかメリットがありません。
その点ホームシアターセットは全て上記の点を加味して設計してますので、ポストプロダクションにて製作されたサウンドデザインに準じた空間表現が出来るかと考えます。
というわけで個人的にベストだと思う構成は
「可能な限り口径が小さく、レンジが広いフルレンジで全chを構築する」
なのですが現実味がないので
もしオススメするなれば現在は国内での入手は難しいですが、M&K Soundというメーカーを強くオススメできます。
現在私のサブウーファーのみですがユーザーでして、色々話すと長くなりますが、簡単に言えばTHX pm3に認証され、数多くのポストプロダクションにて納入された実績を持つメーカーです。
(注1)細 井 慎 太 郎,星 野 進 平 - マルチチャンネル時代のスピーカの選定
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