ご無沙汰のブログになってしまいました。
さすがに仕事しつつブログを書くのは結構なバイタリティが必要なので、世に多く存在するブロガー達には頭が上がりません。
さて本題に移りましょう。
"Acoustic Transducer Company"ことATCは1974年に創業したスピーカーメーカー。
最初は今のATCの礎となっているミッドレンジなど、ユニットを主に作っていた様ですね。
詳しくはATCの輸入代理店であるエレクトリさんのHPに記載してあります↓
知名度は高いながらも、その内容や出音については余り紹介されていない様に思います。
現に僕自身もこのSCM100を手にするまでは結構ふわっとした印象しかありませんでした。
今回はATCの中の代表的モデルである、SCM100の紹介です。
目次
1.特徴
2.特性
3.聴感レビュー
4.ウーファーのネットワークスルー
5.まとめ
1.特徴
1.1 ユニット構成
・31.6cm ウーファー (SM75-314)
まだSLになっていない頃のウーファーですが、それでもなおフレームはかなり強固で、磁気回路もなかなかの大きさです。
・7.5cm ミッドレンジ (SM75-150S)
何と言ってもATCの顔といえばこのミッドレンジドライバー。
類を見ないほどの強力な磁気回路を搭載し、そのいかつさは他の追随を許しません。
このSCM100純正のミッドレンジは本来SM75-150というモデルなのですが、私が所有しているモデルはSM75-150Sという強力版でした。
実際に私の手を横に並べるとこんな感じです↓
・2.5cm ツイーター
1.2 エンクロージャー
エンクロージャーはMDF製のごく一般的なもので、容積はSCM100の通り100Lです。
値段はそこそこハイエンドの割には、見た目の主張は控えめです。
(個人的にはこの無骨さは大好きです。)
2.特性
2.1 周波数特性(ニアフィールド)
(※REWでのニアフィールド測定には実際に信頼性のあるデータなのか否か怪しいので、後日追ってARTAで測定したデータを貼ります)
2.2 周波数特性(1m)
赤:ツイーター軸上
青:ミッド軸上
緑:ウーファー軸上
大体300Hzから上を参照してください。
2.3 Wavelet (1m)
・ツイーター軸上
・ミッドレンジ軸上
・ウーファー軸上
高さ方向が下に推移するに連れて、どんどんWaveletの軸が綺麗に(=Acoustic-offsetが整合)なりつつあります。
要するにウーファー軸上か、それ以下がベストポジションということになります
(コンシークエンスの様に逆さまに設置したら面白いかもしれません)
ともかくマルチ化するので、その時にここら辺を詰めてみましょう。
2.4 インピーダンス特性
あれ?
バスレフポートがあるのにも関わらず、密閉型の挙動を示していますね..........
実はこれ、内部の吸音材が落ちて来てポートを塞いじゃうようです。
こういう雑さというか、甘さがATCらしくて可愛らしいですね。
なので、一旦分解して吸音材を避ける必要性があります。(この事があり、ミッドレンジが強力版であると気付きました)
そしてポートを塞いでいた吸音材を取り払って、再測定。
ちゃんとバスレフっぽくなりました。
3.聴感レビュー
さてレビューですが、大きく弱み/強みはこんな感じ
・弱み
・ツイーターの音が雑すぎる
・低域があまり沈まない
・大音圧下じゃないと本領発揮できない
・巷で言われるほど素直な音ではない(個性は相当強い)
・強み
・カッコイイ、超カッコいい....
「Vital Tech Tones - The Litigants」
この曲に要求されるのは
・アグレッシブさ
・グリップ感
・音圧(これは大音圧じゃないと意味がない)
正にSCM100の強みであり、このスピーカーの為の曲と言っても過言じゃないです。
24年間生きてますが、まだ音で本気で鳥肌が立つとは思いませんでした。
4.ウーファーのネットワークスルー
さてこのSCM100ですが、以前よりATCユーザーの友人から「ネットワークのコイルのDCRが高い」との情報がありましたので、ネットワークをスルーさせてみます。
まずネットワークボックスをご開帳
面倒臭いのでパターンは追いませんが、空芯コイルにATC自社製(?)のコンデンサーが搭載されています。
今回はウーファーのみネットワークスルーするので(いずれはAcoustic-offsetの問題もあるのでネットワークを撤去しますが....)、ミッドとツイーターはこのネットワークを使用します。
使用する機材はこちら↓
・チャンネルディバイダー:dbx - DriveRack VENU360
・パワーアンプ:2 × Kenさん(※)作 パワーアンプ
このクローンアンプ、ネガがMark Levinsonなだけあって、500VAのトランスを積んだりしてます。重さも30kg超えと相当なものです。
上述したVTT - The Litigantsにて
・全帯域ネットワーク
・ウーファーのみネットワークスルー
を比較した動画を撮影したので、ご覧ください。
(収音環境が悪いのでSCM100の評価としてではなく、駆動方式の違いによる相対比較としてご覧ください)
と動画を作ったものの、コンデジ内蔵のマイクではあまり区別できないですね....
ウーファーのネットワークをスルーした事のメリットについて、端的に言えば
・低域の階調表現がかなり明確に
・全帯域での情報量増加
・ツイーターの暴れが若干制御された
・ウーファーの動きが、凄く軽やかになった
・小音圧時の”痩せ”の緩和
手間や物量はかかるものの、概ねマルチ化した時のメリットに相当するものが、このSCM100でもありました。
ただMAGICOやApogeeと比較すると、ネットワークスルーの恩恵は少なかったです。
巷ではATCは鳴らし辛いと言われますが、そうでもないように思いますね。
5.まとめ
今回SCM100というスピーカーを通して、ATCを真面目に聴きましたが、全帯域に渡るアグレッシブさはMeyer Sound HD-1にも通じる物がありますし、加えてこのミッドによる強烈な個性は他に変えがたい魅力がありました。
1991年発売ながら、その当時の姿を現行機でもほぼ変える事なく発売している、そしてそれでも世界中で売れている理由が分かったような気がします。
日本では過小評価されて代理店もコンシューマーは撤退しましたが、勿体無い気がしてなりません。
個人的な評価としては、非常に高いです。
おまけ
イギリス製新旧モニタースピーカー
(※)ケンのオーディオメモ
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