さてこのブログの測定は基本的に私がMac派である故に、Room EQ Wizard(以下REW)というソフトウェアで様々な考察をしてきました。
今日はそんなREWの使い方、そして簡単な測定結果の見方を紹介できればと思います。
本当はこんな面倒臭い事したくないのですが、やはり多くの人が定量的なデータで意見交換する事は、昨今のポエムオーディオレビューしかない日本において、非常に有意義だと考えたからです。
愚痴はこの辺にして、それではいつも通り行きましょう!
目次
1.測定に必要なもの
2.測定方法
3.得られたデータから見れるもの
4.まとめ
1.測定に必要なもの
1.1マイク
(画像はDayton Audio - Omnimic)
これは当たり前ですね(笑)
私はアクティブタイプのDayton社のOmnimic、そして別途I/FとしてPresonus Studio24cというものを通してパッシブタイプのマイクを使用しています。
ですが、これは正直どちらでも構いません
(あまりこの二つで大きな差異は出ていませんので)
1.2 SPLメーター
特にパッシブマイクの場合は(特に音圧を計測する場合には)、絶対音圧には20uPa=0dBというリファレンスがあり、そのリファレンスに準じたSPLである必要性があります。
なので、JIS規格に則った騒音計を用意して、I/Fのゲインを調整させてあげる必要性があります。
なお騒音測定には
・人間の聴覚フィルターに近似したA特性(A weight)
・大音量時の聴覚フィルターに似せた、平坦な特性のC特性(C weight)
・完全フラットのZ特性(Z weight)
があり、特にA weightとC weightは低域成分が音源に含まれていると、かなりSPLが乖離するので、どの特性で測定しているのかを十分に確認する必要があります。
日本では上の画像で用いた、小野測器さんのSPLメーターであれば十二分に信頼性は高いでしょう。
その後Room EQ Wizard側で、SPL meter → Calibrate の手順でキャリブレーションします
この右側の「SPL Reading Calibration」にて、騒音計のデータをインプットすれば、REW側でのキャリブレーションは完了です。
1.3その他
あまり必要はないのですが、インピーダンスを測定できる治具、もしくは諸々内臓しているDayton Audio - DATSがあると色々機能が拡張されます。
2.測定方法
2.1 周波数特性の測定方法です
一番左上の「Measure」をクリックします。
次に出てきた「SPL」のメニューから、測定したい周波数帯域(Start to End)を任意でプロットします。
レベルやスイープ長、スイープ数(REWの測定音源はSine Sweep)は好きに選んでください。
スイープ長やスイープ数を長く/多くすると恐らくS/N比の改善になるかと思います。
(知らんけど)
Sine Sweepが流れた後、位相特性と周波数特性が出てきます。
これで一通りの測定の手順は完了になります。
2.2 インピーダンス
REWはインピーダンスも同様に計測することが出来ます。
手順としては、周波数特性と同じ「Measurement」から「Impedance」を選択。
下記の画面が出てきます。
ここでキャリブレーションの要求をされます。
その時に「Impedance」のアイコンの右隣「Rsense」を100.0→0.0に変更します。
そしてインピーダンスを測定する治具の±の極性をショートさせ、計測します。
そうすると「Rsense」が赤くなり、キャリブレーションモードとなります。
無事にキャリブレーションが完了すると(途中警告が出ますが、スルーで問題ないです)、下のようにImpedance Cal(左上)が出力されます。
このファイルを.txtファイルでエクスポートし、キャリブレーションデータとして入れることにより、セットアップは完了となります。
あまりインピーダンスなんて測定しないですが、経年劣化や故障はインピーダンスを見るのが一番早いので、何か不具合を感じた時に使える程度で良いでしょう。
2.3 TS Parameters
ここからは上級者向けです。
ユニットのTSパラメータも取ることが出来ます。
まずFree Airの状態でインピーダンスを測定します。
これをNakedとして保存しました。
そして次に振動板に質量を付加し、再度インピーダンスを測定してください。
このFsが低下しています、これを「Added Mass」として保存しました。
次に上のツールバーからTools → Thiele-Small Parametersを選択
このような画面が出てきます。
そしたら、上のFree Air MeasurementにはFree Airで測定したインピーダンスデータを(上記の場合ではNaked)、Secondary Measurementには質量を付加した時のインピーダンスデーター(上記の場合ではAdded mass)を選択します。
そしたらManually Entered Valuesの上から順に
・Voice Coil DC Resistance = ユニットの直流抵抗
・Effective Area = 実効振動板面積(Sd)
・Air Temperature = 気温
・Air Pressure = 気圧
・Added Mass = 付加した重さの重量 or ・Sealed Box Volume = 密閉容器の容積
を入力します。
すると自動的にTS Parametersが算出されます。
またWrite Parameters to Fileにてtxtファイルでダウンロードする事も可能です。
3.得られたデータから見れるもの
さてここからは、私が測定から何が見てるのか、メインシステムを例に紹介します。
(データの示すものは重複する事があるので、全てを見る必要性はないと思います)
3.1 周波数特性 (All SPL)
基本中の基本である、周波数特性が観れます。
大体縦軸のスケール(上限の下限のSPL)は50dBで、分解能は1/12 oct.で見ています。
分解能に関しては右上「Control」から変更出来ます。
(測定した段階だとNo Smoothingという高分解能で表示されるので、非常に見づらいです。)
3.2 位相特性(SPL & Phase)
これは180°位相が回ると、Wrappingされてしまうのですが(まあこの方が見やすいですが)、右上の「Control」からUnwrapさせる事も出来ます。
個人的にはサブウーファーなどの調整は、急峻に切られてることが多いので、Unwrapで見ることの方が多いです。
3.3 周波数対歪特性(Distortion)
これで周波数(黄土)における歪率(黒/赤/黄)が見れます。
フロアノイズに埋もれると、白く色付けがなくなって表示されます。
3.4 インパルスレスポンス(Impulse)
ここではインパルスレスポンスが見れます。
ただ注意すべき点は、これは最初に到着した音を0sec.と定義します。
まあ味方とすれば、スピーカーから2.65msec.の位置にスパイクがあるので、直接音との距離差が2.65msec.(90.1cm)の場所で強い反射が起きてるといった感じです。
3.5 残響時間(RT60)
これは部屋にx,y,z軸方向で、音が同じ向き&強さの音が均一に充満した状態から、60dBエネルギーが減衰するまでにかかる時間の指標です。
この指標が分かればかなり有利で
・部屋の低域の上限周波数(シュレーダ周波数)
・室内での距離減衰
など、かなり見える要素は多いですし、使い勝手は完璧です。
ですがこれ後で書きますが、相当大きい出力でないとS/Nが確保できないので、参考にならないです。本当は代替としてT20やT30を参照した方が良いと思います。
それに普通のスピーカーは高域になればなるほど指向性が狭くなるので、エネルギーを均一に充満させる事はできません。
なので前の記事「低域の処理」の時にRT60を計測した時のような、周波数に依存せず無指向性を確保できるスピーカーでないと本当は参照にしてはいけない値でもあります。
なので一般家庭で測ったデータの信頼性は、周波数の高さと反比例します。
3.6 Wavelet(Spectrogram)
最後にSpectrogram(以下Wavelet)これは周波数対時間のエネルギー分布です。
「部屋がどの周波数で、どのような時間をかけて減衰するか?」を観測する事ができます。
3.4で2.9msec.ポイントで反射が生じてると言いました。
実際にWaveletでもそれが観測でき、実際に2kHz~10kHzの帯域で反射が生じているという事がここから読み取れます。
さらにミクロスケールにすると、スピーカーのAcoustic-offset補正(タイムアライメント補正)にも使えます。
黒線が主軸です。
個人的にAcoustic-offsetは、クロス付近で先行音効果が生じない1msec.以内(±500usec.)を指標として見ています。
トラディショナルな15"ダイレクトラジエーター+4"コンプレッションドライバーのセットにしては、良い方だと思います。(思いたい)
4.まとめ
今日はREWの基本的な解説をしました。
1デバイス/ソフトでここまで測定できるので非常に優秀なアプリケーションだと思います。
ただRT60の項でも言及したように、測れたからと言って、それが信頼に値するデータであるかはまた別な話です。
なので運用方法としては
・ある程度勉強して、REWを使う
・細かい事は置いておいて、ある程度外形的な評価軸を設けたい
しかないです。
私も現在勉強してる最中なので、偉そうな事は言えません。
ただこれだけは最後に行っておきます。
家を建設したり、ちゃんと部屋のキャラクターを知る必要がある場合は無理せず
「音響コンサルタントに金払っても丸投げする」
これに尽きます。
例えば下記のように、部屋のキャラクター一式を測定してくれる業者があります。
・SONA
・日本硝子アメニティ
https://www.nea-ltd.com/other/consultant.html
・日本音響エンジニアリング
https://www.noe.co.jp/business/architectural-acoustics/consulting/acoustic-consulting/others.html
この3社はTaxsis World建設時に実際に関わらせていただき、信頼できると感じた業者群です。
オーディオルームであれば、調整含め日本音響が特化してると思います。
まあREWは遊び程度には、非常に面白いソフトだと思います。
この機会に是非、遊んで見てはいかがでしょうか?
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