キャンプで疲れてしまったので、家でゴロゴロしてます。ゴロゴロしているだけでもしょうが無いので、僕のモニタースピーカーのリファレンス、HD-1のレビューをしようと思います。
既にディスコンになってしまったモデルではありますが、約30年間売られた、世界初のパワード・モニタースピーカーに敬意を評してレビューします。
目次
1.HD-1について
2.測定
3.聴感レビュー
4.まとめ
1.HD-1について
HD-1を話すにあたっては、まずMeyer Sound社について軽く触れる必要があります。Meyer Sound社はスピーカー・音圧分布シミュレーター・測定機器の設計・製造を行なっているメーカーです。
そしてR&Dにかなり意欲的なメーカーで
・世界初のプロ用パワードスピーカー(MSL-4)
・可聴域以下の再生に特化したトランデューザー (VLFC)
・25Hzという低周波まで位相をほぼフラットにさせた、次世代型モニタースピーカー(The Blue Horn System)です。
・ソースに依存しない測定方法 (SIM : Source -Independent -Measurement)
それ以前にも833と言うパッシブモニタースピーカーが存在してはいました。
ですが、HD-1が特別な存在となった理由は
・同社の特徴でもあったパワード型スピーカー第一号
・SIM開発の際のモデルとなったスピーカーであった
という事でしょうか。
実際に現行モデルのラインアレイシステムのLEOやLYONは、リファレンスにHD-1の存在がある事はMeyer Sound社のインタビューからも明言されています。
(参考URL
The Blue Hornの登場により、本当の意味でHD-1はようやく引退できたと感じます。
実際にバークレーの本社でBlueHornを視聴した友人曰く「HD-1の完全上位互換」とのことでした。
ですが、同社にとっての特別な一台である事は様々なインタビューを見ても確かでしょう。
HD-1のスペックは下記のURLを参照ください
2.測定
測定光景
(床面にはコムフィルター低減用の吸音材を設置してます。)
2.1 測定環境
マイク:Dayton Audio - OMNIMIC
測定アプリ:Room EQ Wizard
2.2 測定結果
・トータル周波数特性(各50cm)
・紫:軸上
・赤:30°
・緑:60°
・青:90°
・各ユニット周波数特性(ニアフィールド測定)
・紫:ポート
・黄土:ウーファー
・青:ツイーター
・周波数対歪
・Wavelet (軸上50cm)
2.3 考察
まず周波数特性。かなり平坦ですが、公表の±1dBで40~20kHzとは乖離しています。実はこれは罠があり、上記のグラフは1/12oct.の分解能で表示(1オクターブ中に12ポイント)していますが、メーカー公表は1/3oct.なのでかなり分解能が甘めなのです。
とはいえ、人間の耳の周波数分解能は1/3oct.と近似(注1)らしいので、単純に私が細かいだけかもしれないです。
軸外特性も±30°では~10kHzは殆ど変化せず、もメーカー公表の指向性(水平±30°)はあながち間違いではなさそうです。
380~750Hzでポート漏れがあり、結構そこは気になるところです。
歪はほぼフロアノイズに埋もれてしまい、計測できません。
またWavelet解析では、前回のMTMのレビューに引き続き、300~20,000Hzの範疇で±0.5msec.に収まってます。非常に優秀です。
(これ30年前の製品ですよ.....)
(注1)小野測器 - 音質評価とは(page2)
3.聴感レビュー
いつものリスニングポジションに設置
天井以外の一次反射点は全て吸音
3.1現在構成
Apple iMac
↓
MYTEK Digital - Manhattan DAC (FireWire)
↓
Meyer Sound HD-1(60Hz~)
M&K Sound MPS-5410(~60Hz)
何故サブウーファーを付けているのか?
理由は2点
・部屋が広くHD-1のパワーでは少々酷なものがある為
・低域を20Hz~からフラットにしたい為。
このサブウーファーについても後で書きますが、Skywalker Soundに納入歴のある、ポストプロダクション用のサブウーファーです。
MPS-5410 & HD-1の周波数特性 at リスニングポジション
3.2レビュー
全体的な音のイメージとしては「非常に全帯域明瞭かつ圧を感じる、マッシブ/ソリッド系サウンドの極地」という印象です。
とにかくサブウーファー無しでもローの出方が凄まじく、32Hz(-6dB)もスペック詐称ではないです。寧ろ逆スペック詐称なのかと思うほど、沈み、また量感が出ます。
そして情報量もかなり多いです。
多いというか、多すぎてもう機材や音源の荒さを思いっきり出してきます。
以前書いたMTMの記事の様な、簡易リスニング用途としての使用方法は全く向きません。
DAC(IF)をMytekのDigital 192 DSD-DACからManhattan DACに変更した際の変化量は、酷いもので同じ音源でも音数が劇的に増え、またタイトに。
機材の個性を見るぶんにはもってこいですが、それにしても変わりすぎです(笑)
また軸外特性は良くないのと、Acoustic-offsetを決めているポイント(ウーファー / ツイーター間)以外だと空間が出ません。
要はリスニングポジションにかなりの節制があります。
ただ音源 / セッティングが決まると、本当にマッシブながらも抜けの良いサウンドです。
ツイーターがかなりブライトな事もあり、ビッグバンドなどとは相性抜群です
Quincy Jones - Ya Gotta Try Harder
今自作のメインシステムの音の質感の指標は、このHD-1をリファレンスとして調整しています。
4.まとめ
ハイエンドモニターは着実に進化を遂げ、確かに性能だけ見れば、昨今のGenelec The OnesやDutch&Dutch 8C、Barefood MM27、そしてNuemann KH420などに比べてば旧石器時代の様なものです。
ですがHD-1が築いた歴史や、DSPが無かった時代にここまでの特性を叩き出した、オーパーツとも言える内容・そして今尚世界で通用している出音。
本当にコレクトアイテムとしても、モニタースピーカーとしても満足出来るスピーカーシステムだと思います。
P.S.
HD-1は何かと高価と言われていますが、アンプ・チャンデバ全部込み込みで1,300,000円は安価だと思います。
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