上の画像は、MOVIXさいたま新都心のDolby Cinemaです。
ここで映画体験はAvengers - ENDGAME。ここのサイトのオープニング作品です。
最初に書きましょう。
「Dolby Cinemaを見て以降、映画館探しの旅は終わりました」
映像や音響については、既に色々と皆さんが詳しく書かれてますので、
ここでは「ホームシアターをやっている人間視点でのDolby Cinema」について
お話しようかと思います。
・映像
映像はレビューされている方々が言うように、黒の沈み方が素晴らしいです。
これはプレショーで一番体感しやすいかと思います。
プロジェクターでホームシアターを構築している身として、黒の沈みのプライオリティはかなり高く、プロジェクターをJVCにしたのも、黒を最優先させた結果です。
Dolby Cinemaの
・上限輝度は108nits(通常の映画館は48nits程度らしい)
・コントラストは1,000,000:1(通常は1,800:1)
Dolby Cinemaと通常館の下限輝度はダイナミックレンジから推定でき
(理論値だと思うので、本当に参考程度ではありますが)
・Dolby Cinema : 0.000108nits
・通常間:0.026667nits
となる為、非常に黒が沈む事が数値で分かります。
因みにnitsと言うのはcd/m^2="1平方メートル"の中に"何本分のろうそくの明かりがあるのか”と言うような単位です。
話は脱線しましたが、実際の映像はJVCの黒の沈みと、Sonyのブリリアント・ヴィヴィッド感を両立した映像です。
Christieレーザーといえば、CINECITTAやBESTIAなどがあります。ですが、これらの映画館ではDLP独特のレインボーノイズが見えてしまうのですがDolby Cinemaではあまり感じません。
カラーホイールの速度などや何かしらの対策を講じているのかもしれません。
Dolby Cinemaのプロジェクター
2.音響
2.1 スピーカー
Dolbyは傘下にSLSというスピーカーメーカーがあり、国内にあるDolby Cinemaは全てSLS製となっております。(本社はMeyer Sound - EXP seriesです)
このDolby Cinema、実は特筆すべき内容があるんです。まずは下記の画像をご覧ください。
この写真、実はDolby Cinemaの施工中の貴重な写真です。
感の良い方ならお気づきかと思いますが、フロントの5chはラインアレイになっているんです。
立川シネマシティを筆頭に、CINECITTA、最近はChristieがVive Audioを発表して以降、映画館におけるラインアレイの認知度は急激に高くなりました。
実際にはこんなスピーカー (SLS Audio - CPA6600V2)
このスピーカーも前回のグランドシネマサンシャインで紹介したIMAXのスピーカー同様、仮想同軸のような見た目をしています。
ただリボンツイーターがこのように手前ギリギリまで来てるのは、ラインアレイとしてスタッキングした際にスピーカー間の距離が離れると、周波数特性が乱れているからかもしれないですね。
ラインアレイには様々なメリットがあり
・ラインアレイの数や角度で、フレキシブルに指向性をコントロール出来る
・音響パワーをポイントソースと比較して、格段に向上できる
などという点があります.....
解りづらいので可視化しましょう。
500人規模の大劇場を想定した場合のラインアレイ/ポイントソースの本当に大雑把な比較です。
・実際にDolby Cinemaで使用されるラインアレイと同等のラインアレイでの音圧分布
(Meyer Sound - MINA×10)
・ポイントソースでの音圧分布(Meyer Sound - Acheron80)
いかがでしょうか?
もちろん、かなり大雑把な条件での比較ではありますが、ラインアレイの方がより
・任意の範囲に
・均一に
・大きい音圧を
提供出来る事がお分りいただけたかと思います。
またサラウンドスピーカーに関して、Dolby Cinemaに限らずDolby Atmosは「Object Based Audio」となっており、各スピーカーが各chとして独立しています。
視聴位置をあらかじめ任意で指定するのであれば、スピーカーのアングルをスピーカーの指向性によって調整が出来ます。
しかし映画館のような場合。特にハイト(天井)スピーカーに関しては
・鉛直/水平方向での指向性が広く
・均一な周波数特性で放射
出来る事が望ましいです。
Dolby Cinemaではトップスピーカーは球状のスピーカーになっていますが、この内部は下記の画像のようになっています。
(画像はSLS Audio - MA390)
一見ウーファーのように見えますが、真ん中の部分にツイーターが搭載されており、いわゆる「同軸(Coaxial)型」です。
同軸型は水平/鉛直方向共に指向/周波数特性が均一ですので、ハイトスピーカーにおける課題における回答としては理想だと思います。
(この類の同軸スピーカーは問題点はあるのですが、それはまた後日)
2.2 シアターの設計
Dolby Cinemaの箱の設計は基本的に低域から高域まで全吸音する、Non-Environment思想で、体感的なNC値(部屋の中の静けさ)は相当低く、かなりシアター内に入ると圧迫感を覚えます。
またサイトごとで結構個体差があり
・MOVIXさいたまは躯体がしっかりしているせいか、かなりフォーカスが定まっている
・丸の内ピカデリーは躯体が共振してしまい、音のフォーカスが甘い
印象があります、これはどちらも"Universe"で検証しました。
2.3 音質
そして肝心のDolby Cinemaの音ですが、基本的にどこも「寒色・硬質で曖昧さのない音」だと感じます。
そしてフォード vs フェラーリが特に良い例でしたが、ここも結構酷い音割れというか、刺さる/歪んでいるように感じます。
(単純な音質だけ見れば、個人的にはバルト9が高いように思います。)
ただ定位移動はとても上手く移動していると思います、ここに関しては素晴らしいです。
Dolby Cinemaはサイトごとで、かなり音が変わるのですが、特に素晴らしかったのはミッドランドスクエアのDolby Cinema。
”Universe”の中で「私の秘密を知りたい?」と右後方から左前方に定位移動するシーンがあるのですが、天井や壁面に張り付く事なく、まさにオブジェクトとして空間に定位・移動している様には「This is Black」のくだりよりも衝撃的でした。
3.まとめ
Dolby CinemaはよくIMAXと比較されると思いますが、正直IMAXのように単純にボリュームを追求するだけの”飛び道具”的コンセプトとは異なり、基本に忠実な設計を行なっているように感じます。
Dolby Cinemaが全てとは思いません、勿論何の規格も無く、また独自規格でも優秀な映画館は多くあります。ただこの手の上映フォーマットとしては、ブレイクスルーを起こしたと感じ、これからの映画館のデファクトスタンダードになっていくと思います。
"Discover it in Dolby Cinema"
まさにこのキャッチフレーズに恥じぬ、現時点では一番良い上映フォーマットのように思います。
次からはDolby Cinemaの各サイトについての感想を書いていこうかと思います。
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