さて昨今は身の回りにオーディオルームを含む家を建ててる方がいらっしゃいます。
その際に本格的なホームシアターを検討されている方もいるでしょう。
そこで私もTaxsis World建設の際に盲点だった「スクリーンの悪影響について」という題材を音の側面からアプローチしていきます。
これは意外と知られていない影響なので、もしホームシアターを組む予定の人は、読んで損はないと思います。
それではいきましょう。
目次
1.何故スクリーンを設置すると音が悪くなるのか?
2.実際にどの程度の影響があるのか?
3.対策としてどうすべきか?
1.何故スクリーンを設置すると音が悪くなるのか?
結論から言えば、「サラウンド(バック)スピーカーの音がスクリーンに反射。定位が狂う」という現象です。
例えば飛行機が前方(スクリーン側)から後方(視聴者側)に向かってくると仮定します。
飛行機の音が前方から後方に移動するのは、フロントとサラウンド(バック)の音圧差によるものです。
しかしながら音がスクリーンに反射してしまうと、前面から後面に上手く繋がらなくなります。
これ実際には”スクリーンだから”という訳ではなく、スピーカーと壁があれば普通に起きる話です。なので2chオーディオも他人事ではありません。
タイトルはあくまで私の家においては、このサラウンドバックの音の反射が気になったので、このタイトルにしました。
(恐らく大型ソファーなどの物が多く吸音される為、フロントの反射音はあまり気にならない様です)
2.実際にどの程度の影響があるのか?
では実際にどの程度音に影響があるかはわからないですよね?
なので今回は式を使って、ある程度定量的に算出していきたいと思います。
2.1 Barronの修正理論を用いて、反射から生じる虚音源の音圧を算出する
(訂正:r1<r2)
まあ実際に完全鏡面反射なんて起こらないんで、実際にはこれより低くなるでしょう。
平均吸音率αは残響時間RT60から、Eyringの残響式でサクッと簡単に算出できるので、これについては「一次反射音を全て吸音した場合と、それにおける残響時間予想」というタイトルで別に書きます。
(就活で提出した課題のうちの一つなので、もう出来てはいます)
また指向係数は7と書きましたが、これはJBL 8340Aという私の家のサラウンドスピーカーのテクニカルデータに乗ってました。
(参照URL:https://jblpro.com/products/8340a )
まあTaxsis Worldは27畳と比較的大型でも-3dBなので、意外とバカに出来ない要素だと思います。(まあこれ、特にスクリーンだから生じる現象でもないんですけどねw)
2.2 鏡面反射となる下限周波数
さて2.1では鏡面反射を前提に反射音のSPLを検討していました。
ですが実際に波長が長いほど鏡面反射は出来なくなり、それは算出する事が出来ます。
フレネルゾーンとはいう言葉をご存知でしょうか?
まあ音も電波も波なので、音に置き換えれば「回折せずちゃんと鏡面反射できる領域」です。ここでいう領域とはスクリーンの大きさとし、フレネルゾーンが成立する周波数を算出します。
その方程式はこのコラムに置き換えると
・鏡面反射に必要な半径:R
・スピーカー〜スクリーン間:d1
・スクリーン〜リスポジ:d2
と置くと
となり(nは自然数)、Taxsis Worldの場合はざっと計算すると1051Hzがスクリーンにて鏡面反射をする第一フレネルゾーンとなります。
この周波数が回折せずに鏡面反射する、下限周波数ということになり、2.1で計算した減衰は1051Hzより上の帯域のみ適用されます。
2.3 第一波面の法則
第一波面(先行音効果)とは、2音源(今回で言うとr1経由とr2経由)が僅かな時間差(音声や音楽では30msec.にもなる)の時、先に耳に到達した音源側からのみ音が聞こえる現象
また第一波面の法則に関する論文(※)では、以下の様に記述されています。(以下引用)
1)第2音(r2経由)が十分に第1音(r1経由)より(10~15dB)強ければ、第2音は先行音効果に打ち勝つ
2)第1音の位置が第2音の方向の差が最大約10°までの間のときには、第2音の方に 音全体を引っ張る。そして、それ以上では第 2 音の影響が小さくなっていく。二つの音の到着時間差が1ms以下ならば第 1 音と第 2 音の間に音像が生じる
3)先行音効果は質的に似た音に対して生じやすい。第2音が第1音と大きく異なれば融合は生じない。特に、第1音と第2音のスペクトルは似ていなくてはいけない
とあり、これについてTaxsis Worldでの条件を当てはめると
1)第2音は2.1の項目より、第1音-3dBのSPL
2)10°よりは明らかに大きい
3)鏡面反射による虚音源なので、スペクトルはさほど差異は無い
となるので、第一波面の法則は十分に生じうる条件ではあります。
ただやはりサラウンドの音は前から聞こえる時があるんですよね、なのでまだ何か条件がかけていると思うので、分かり次第加筆します。
(※)播摩敏雄 - 2音源により生じる音像と先行音効果の関係に関する研究
3.対策としてどうすべきか?
対策という対策は実際に出来るかはさておき
1.スクリーンを小さくする
2.スクリーンを傾ける
3.スクリーンをサウンドスクリーンに、後方はデッド
した方が改善される気がします。
ただ
1に関してはスクリーンの存在意義に
2に関しては張り込み限定で2chとの両立は難しい
3に関してはスクリーンゲインが取れず、HDRに適した光量が採りにくい
と各々に問題はあるので、一長一短ですね。
映像まで加味するともっとメリットデメリットは見えてくるので、そこはオーナーの取捨選択だけな気がします。
スピーカー側からのアプローチでは
・スピーカーを自分の方に向ける様アングル調整し、指向性は狭くする
のが一番手っ取り早いのですが、実際には指向性は広くないとch間の繋がりが良くならないので、そこもデメリットはあります。
理想的な解決案としては
・スピーカーの位置によって指向性の異なるモデル・アングルで設置
・基本的には前面吸音
でしょうか。
実際の映画館を例に挙げてみましょう(TOHO CINEMAS仙台)
これはサラウンドバックではありませんが、上方のAtmos用スピーカーの最前列。
ここに関してはアングルが急で座席の方向を向いており、かつスクリーンの方向にユニットが来ない様、他のchに比べて小さいモデルが使用されています。
加えてtmosやDTS-Xといったオブジェクトベースは、各chが完全独立ゆえに
・音響パワー
・広指向性
が求められます。
基本的には
・アングルを聴衆者側に向ける
・水平指向性は広く、垂直指向性は狭いスピーカーを使用し
・全体的に部屋をデッド
がベストだと思います。
Dolby Cinemaも前面のスピーカーだけ狭指向性・高出力モデルを変えている例があります。
これは恐らく上述したスクリーン反射とオブジェクトベースのニーズに対するDolby社の回答な様に思います。
さすがに先端を行ってるフォーマットだけあります。
(日本でこの例は見受けられませんが・・・・・・・・)
まあ映画館を例に出してもしょうがないので、家庭用としては、アングル調整付きのブラケットを採用して、インパルス応答と聴感で決める他ないと思います。
因みに私の家は2chオーディオが一番優先度高いので、もう諦めました(笑)
今回はここまで。
なんか軽い気持ちで書いたのですが、随分と長くなってしまいました(笑)
次は久しぶりにオーディオネタではない記事です。(ナナチでもないです)
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