さて今回はルームアコースティックの話題。
皆さんは私の印象を「スピーカーの人」と仰られますが、スピーカーもそうですが、ルームアコースティック(以下ルムアコ)の方が強い関心があったりします。
そこで私が過去に製作したルムアコ材を紹介します。
ルムアコ、特に拡散体においてはオーディオマニアに一番馴染み深いのは、日本音響エンジニアリング社のAGSでしょう。
あと最初に言って置きますが
・低域を吸音できると謳うルムアコグッズ
・拡散板と称して、実際にフラッターエコー位しか対策できない薄いルムアコグッズ
はまず怪しんでください。
「ルムアコも低域同様、例外なく物量が物を言います。」
目次
1.どのように拡散するか?
2.シミュレーション
3.測定
4.まとめ
1.どのように拡散するか?
ますはこれですね。
拡散と一言で言っても、上述したANKHの様にランダムに支柱を並べるのか?それともQRDの様な凹凸をつけて拡散するのか?
まあ資材の入手性・コスト・手軽さの側面でここはQRDになりました。
QRDと言っても1Dと2D(D=Dimension)というものがあります↓
・1D QRD
・2D QRD
まあ1D/2Dの定義はとても視覚的に分かりやすく、感覚的に捉えやすいです。
2.シミュレーション
まずはターゲット周波数を設定します。
Mendel Kleiner - Acoustics of small roomによると「空間表現の知覚は、聴覚において1kHz〜8kHzの周波数に支配される」(※)と書いてあるので1kHzとします。
ただ”1kHzから拡散し始める”では意味が薄く、"1kHzからコンスタントに拡散する"事を前提としたので、デザイン周波数を500Hzにしました。
ちなみに拡散による反射音の減衰ですが
(減衰)=10log(10)ブロック数
で定義できるそうです。
ただ総反射面積における、拡散板の大きさはかなり小さいので、一個おいたからと言って対策が十分というわけでもありません。
特に上の画像の様なCremonaなどは、比較的高い周波数から回折する様に設計されて居ますので、ホーンなどの狭指向性のものに比べれば効力は無いわけです。
それでも効果はあります(後述)
さて話は反れましたがシミュレーション結果です
このシミュレーションは音源から1mの距離に設置した場合を想定しました。
5000Hz付近で若干拡散出来なくなっていますが、大体Mendel Kleiner氏が提唱した1~8kHzのレンジを2π空間で拡散出来ています。
(※)参照サイト
Lo-Fi Audio - スピーカーの指向性、もしくは軸外周波数応答(5)
URL : https://naseba.exblog.jp/27458649/
にしてもブログは結構な頻度でこのブログに出てきますね(笑)
日本ではまず書かれない海外の書籍の意訳から、その趣旨を取り入れたモデファイ・製作と深く広く取り扱ってます。凄いですね。
個人的には一番音響系では価値のあるサイトだと思ってます(確固たる意志)
3.測定
さて今回は鏡面反射する帯域の減衰率から、効果が見えるので、インパルスレスポンスから観測しました。
またスピーカーの手元にあったCremonaを、設置位置として、スピーカー〜リスポジの中点となる位置に置きました。
青が設置前、緑が設置後のインパルスレスポンスです。(測定はリスポジ)
またこの拡散板の効果は「直接音に近いスパイクのみ」です、後ろのはリスポジ背面の壁に吸音材を設置したためです。(紛らわしくて申し訳ありません)
上の赤字で「ここのスパイクが改善後に半分の割合に」と明記されてますが、
正確な表現としては「ここの反射の強度が改善後に約50%になった」です。
効果は想像以上にあり、正直驚きました。
4.まとめ
さてまとめに移ります。
実際に聴感上の効果もかなり大きく、一番の改善点は「音が非常に滑らかになった」という点です。
これは前例として何回か体感しており、日本音響エンジニアリングの試聴室(通称AGSの森)や、Nazo-otoko邸のANKHモドキでも類似の効果がありました。
裏を返せば、今のメインシステムの強みでもあり弱みでもあるアグレッシブな音というのは、ルムアコを行なってない事が一要素になっているのかもしれません。
いい勉強になりました。
追伸
この超手間のかかる2D QRDの制作を快く手伝ってくれたYuuki_C.R.氏(Twitter ID: @Yuuki_3038 )に対し、この場を借りて感謝申し上げます。
ありがとうございました。
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