今回は一番思い入れがあるスピーカー故、長くなります。
目次
1.思わぬ導入
2.最初の修理
3.諸特性
4.聴感レビュー
5.まとめ
1.思わぬ導入
Amati Homageは私が高校2年生の時に購入し、修理し、今の礎を築いてくれたスピーカーでもあるので非常に思い入れがあります。
そもそも当時私はダイナミックオーディオ様で視聴させていただいたCremonaとOctaveの組み合わせに感銘を受け、Sonus faberというメーカーに強く憧れを抱いていました。
Cremonaは当時中古でも50万円を超える、当時の私からして見ればれっきとしたハイエンドスピーカー、就職し大人になってから購入するだろうというビジョンに期待しつつ、なけなしのお金で下位機種「Grand Piano Home」を購入しました。
Grand Piano Homeも非常に濃厚かつブライドな音で、初代Cremonaを彷彿とさせるものがあったので満足はしていたのですが、高校二年生の時に転機が訪れました。
それは同じ高校で一緒にオーディオにハマっていた友人から、「ヤフオクに壊れたAmati Homageが出ている」との情報があり、即入札。
Cremonaですら手が届かないのにAmatiなんて夢のまた夢、そう思いつつも気力で競りに競って最終的な金額は400,001円、当時の私の殆ど全財産でした。
実は今だから言えるのですが、これは親に内緒で購入したものでしたので
・平日に
・学校をサボって
・何でも屋に保護者のフリをしてもらい
・レンタカーを何でも屋名義で借り
・勿論制服で引き取りに行った
という経緯があります。
場所は都内某所のリサイクルショップ。
こう言っては失礼だが、ショップというよりかは貸し倉庫みたいだったのを記憶しています。
故に店の奥から登場したAmati Homageを見たとき、その圧倒的なオーラと、これを所有できるという多福感がありました。
こうしてひょんな事から、Amati Homageのオーナーになりました。
全世界のAmati Homageユーザーに怒られそうな景観ですね(笑)
ただこの状況では鳴りません、前述したように壊れてるんです。
具体的な不良状況としては
・ツイーターの接触不良
・ウーファー・ミッドレンジの断線
・全ユニットのウレタン部分劣化
です。
2.最初の修理
実はこの時に今みたいに修理なんてことはした事がありませんでした。
業者に頼もうにも非常に高価で、全財産を失った私に、その依頼をする余裕などは無いので、とにかく分解するところから始めました。
・ウーファー
通常のScan speak 24Wにキャンセリングマグネットが付いてますね。
非常にイカツイ。
・ツイーター
分解
・ウーファー
・ツイーター
磁束を高めるために、銅リングが付いてます。
修理
・ウーファー
ここのボイスコイル〜錦糸線までの部分で断線してしまうので、錦糸線と錦糸線までのリードを交換・再構築
・ツイーター
ツイーターの断線も修理しました
上手く音が出ました。
が、若干ではありますが出力が落ちてしまいました。
要因としては修理する際にボイスコイルを一層解いてしまったため、Bl値が下がり、能率も下がったのかもしれません。
というわけで・・・・・・
ツイーターはダイヤフラムを輸入・交換しました。
今思えばTSパラメーターガン無視の恐ろしい修理だっと思います。
(結果的に測定で問題なくて本当に良かったですが.....)
というわけで一応は修理完了しました。
ただ治したのは良いものの、6畳という空間はあまりにもAmati Homageにとっては小さすぎました。
正直低域過剰すぎたのと、大学受験を控えてた為、あまり高校の頃のAmatiとの記憶はないんですよね(涙)
3.諸特性
3.1ニアフィールド特性
本来であればPong!!とニアフィールド特性を出す予定でした、特にSonus faberは極めてセオリーに沿った結果を残してくれるので、あまり考察の余地が無いというか「フランコ凄いなぁ」と思うだけなので。
ですが、このAmati Homageは違いました。
これが実測データです。(ウーファーは2発あるので、上図より6dB増加します。)
ミッドレンジのコンデンサが抜けてると思って、久しぶりに冷や汗が出ました。
こういう時のStereoPhile、早速この件について書かれていました。
(参照URL : https://www.stereophile.com/content/sonus-faber-amati-homage-loudspeaker-measurements-part-2 )
上図は、ウーファー/ミッドレンジと各ポート全ての周波数特性を示しています。
図4の右上のトレースがミッドレンジ・ユニットです。これは中域を通って傾斜していることがわかりますが、70Hzで出力がわずかにピークを迎えています。この周波数でのミッドレンジユニットのすぐ上のトレースはツインウーファーの出力で、30~180Hzのバンドパスをカバーしていますが、ウーファーポートのピークは20Hzの低い位置にあります。
グラフの右上のトレースはウーファーポートの出力で、非常に幅が広く、レベルがやや抑えられています。最後に、ミッドレンジユニットがピークを持つ同じ70Hzの周波数にピークを持つ下のトレースは、ミッドレンジポートの出力です。これらのラジエーターはすべてパスバンドの外ではよく振舞っているように見えますが、それらの幅広い重なりがAmatiの全体的な低音の振る舞いについての予測を複雑にしています。
ここで同じスケールでミッドレンジ及びミッドレンジのポートの実測データを、今度はポートを交えて見て見ましょう。
おおよそStereophileのデータと合致します。
ということは・・・・・
・ミッドレンジは70Hzのポート周波数~再生する様にデザインされていた
・故障ではなかった
という点があって何よりです。
・ウーファー
Stereophileのポート周波数と私のAmatiでウーファーの特性データが違う原因は恐らく
・暫くぶりに鳴らしたので、コンプライアンスが上昇した
・2つあるポートの1つを塞いでfdを低下させていた(この調整は公認です)
でしょう。
・ツイーター
ツイーターはメタルグリルのせいか、結構荒れますね。
・ネットワーク
ミッド〜ツイーター間は12dB/oct.ですが、ネットワークは公称6dB/oct.なので
回折による減衰が6dB/oct.でトータル12dB/oct.なのでしょう。
そして個人的に思ったのは
「Amati Homageは2way+サブウーファーという設計思想なのでは?」
という事です。
大体110Hz程度でウーファーとミッドレンジの音圧は合致しますが、クロスオーバーという訳ではなさそうです。
思想としてはJBL Project Evelest DD66000のようなスタガー接続なんでしょうけど、前にも書いたように、ネットワークでもユニットでも位相回転しないことが前提の設計なので、ロジカルなSonus Faberにしては珍しい思想です。
3.2 Wavelet
軸外特性を出すためにAcoustic-Axisがどこにあるのかを見るため、Wavelet解析のデータをまずは見て見ましょう。
・ツイーター軸上
・ミッドレンジ〜ツイーター間
・ミッドレンジ軸上
ミッドレンジ軸上がAcoustic-Axisなんでしょうね。
これは以前書いたCremonaと同様です。
3.3軸外特性
まあ、あれですね。
18cmと2.5cmではちょっと無理あるな〜って感じです。ましてや2kHzですしおすし。
突然ですがKaという指標があります。
これはユニットの指向特性との因果関係があり、算出方法として
Ka = (スピーカーの円周) / (任意の周波数における波長)です。
簡単に言えばKaが小さいほど指向性が広く、大きいほど狭いです。
上の実測データから、クロスオーバーは約2kHzにあるとします。
その時
・ミッドレンジのKa=14.96 at 2000Hz
・ツイーターのKa = 0.2886 at 2000Hz
となります。
ちなみにCremonaが15cmなので、Ka=10.39となり軸外特性もまた良いです。
ウーファーka=5 / ツィーターka<1などであればそのクロス周波数での軸外特性が大きく乱れることが予想されるらしいので、当然の結果といえば当然でしょう。
ミッド軸上のみがサウンドスポットという、旧時代のスピーカーデザインですね。
3.4 インピーダンス
突然ですが、Amati Homageの背面画像です。
バスレフポートが3箇所あり
・一番上がミッドレンジ用のポート
・下二つがウーファー用のポート
となっており、この下のポートは使用環境や趣向によって塞いだりすることをメーカーとしても考えてるみたいです。(付属品にポートを塞ぐアジャスターがあります。)
なのでインピーダンス特性はポート全開放、及びポート一つを塞いだ2種類比較します・
・ポート全開放:青線
・ポート一つ塞ぎ:緑線
・ポート開放全開の場合のfd = 18Hz
・ポート一つ塞ぎの場合のfd = 14Hz
となり、全開放でもfdがかなり低いですし、このポートアジャストメントの意図がよく分かりません。
ただ総合的に見ると最低3Ω、最高6.9Ωなので非常に平坦。
低インピーダンスさえ対応していれば、そこまでシビアなスピーカーではなさそうです。
4.聴感レビュー
下がチープな台座になっていますが、それには訳があります↓
よく見ると後ろのメインシステムもこの台座に載せてるのが見えるかと思います。
実はフローティングボードになってます(Amati Homageの場合はf0 = 2Hz)、機構はケンのオーディオメモのi-Floatを踏襲してます。
さて僕の苦手な聴感レビューですが、端的にいうなれば「凄まじいホール感を纏ながも、実体感がある、非常に明るい音」です。
ピアノを聞こうものなら、そこにホテルの広々としたエントランスに、スタインウェイ D-274が雄大に演奏されているといったところでしょうか。
そして最初濃厚、後味スッキリといった感じで、かなりキャラクターは強いのですが、後味は良いんですよね。
とりあえず撮ってみました。
ちゃんとしたPCMレコーダーで撮らないとダメみたいですね......
このタイプのスピーカーはSonus faberとMusikしか聞いた事がないので、何がこの要素たらしめるのか気になります。
今までで一番雑なレビューですね(笑)
ただ最初に、そして一番思い入れがあるスピーカーなので逆にレビューし辛いんですよね。家族のレビューをしているといっても過言ではないので
そういえば以前、ケンのオーディオメモで有名なKenさんと一緒にAmati Homageのネットワークスルーをしました↓
この時、公称クロスオーバー周波数の200Hzでクロスさせた事があって、かなり違和感というか「普通のハイエンドスピーカー」という印象になりました。
"3wayスピーカー"として設計されていたのか、それとも何か別のコンセプトがあったのか、気になるところです。
なんだかんだ言っても、やはり出てくるのはあのソナスの音なのです。
Amati Homageはその音色が特に濃く、フランコセルブリンの技術力だけではなく、感性力も非常に凄まじかった事が垣間見えた気がします。
とある方が仰られてた「理論と感性の交差点にいる人」とは、言い得て妙ですね(笑)
5.まとめ
ソナスファベールのスピーカーの中では、初めてのフロア型スピーカーという事もあって相違工夫をされたのでしょう。
"Homage"を冠したスピーカーにも関わらず、かなり意欲作出会った事はとても意外でした。
冒頭にも記載しましたが、このスピーカーが無ければ、海外製品は高価な印象がありましたので、国産至上主義に戻ってDS-20000やSCEPTER5001などを買っていたかもしれません。(まあDS-20000は所持してるので、後々書きます)
私自身にパラダイムシフトを起こした、私にとってはもう分霊箱と言っても良いでしょう。
今現在フランコセルブリンが手がけた製品、特にHomageシリーズのAmatiとStradivariは非常に球数が少ない為、中古市場が高騰していますが、これは絶対に売る事はないでしょうね。
ユニットはScan speak Classic-series 24W/18W/D2905なので、最悪リペアできなくても、類似ユニットがあれば移植は可能なので、移植してネットワークを新調するでしょう。
これからも大事に使っていきたい、在り来たりな表現ではありますが、僕の宝物です。
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